鎌倉の梅 2008.3.15 東慶寺の梅と高木侃先生講演

東慶寺は先週から満開だったんですが、今日はどうでしょう。

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実はこの日、高木 侃(ただし)先生の「三くだり半の世界−東慶寺の縁切り寺法にふれて」というセミナーが書院であったのです。と言っても知ってて行った訳ではなくて、入り口で聞いたのですが。書院に入れるなんて滅多に無いことなんで、行ってみると、座敷には先生が一人だけ。

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げっ、「これ何時からですか? まだ15分ある? ではその頃に」と先に写真を撮りに行って丁度に戻ってみると、参加者は私を含めて3人。その後段々と増えて10人弱だったかな?


またここかいって? なにをおっしゃいますやら。
だから言ったでしょ、今日は違うので御座いますよ。ここは普段は入れない書院の中から。

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しかし、なかなか面白かったです。一般常識が誤解でしかないのは平安時代ばかりではなくて、江戸時代についてもそうなようですね。夫の権力が絶対で、妻は虐げられていたとか、貧農史観ばりのイメージがかなり根強く浸透していますが、そんなもの農村においては実は明治時代においてすら違ったことは民俗学の方からも語られています。

建前上は妻の不倫は死罪ということになっていましたが、しかしその建前と現実は全く違っていたと言うことを、以前に確か厚木市とかそっちの方の学芸員さんの文書で読んだ覚えがります。妻の不倫は実はありきたりなことで。どちらかと言うと、全て許すから戻ってほしいとかの事例の方が多いとか。やっと見つけました。これですね。『有鄰』平成13年1月1日第398号。相模原市史料調査専門員さんでした。

通説での夫は「勝手」に離縁出来たなどというものではなくて、離縁状の実態は夫に妻の再婚の自由を認めさせる証書に近かったと思います。つまり権利ではなくて義務の方に近かったと。高木 侃先生も、その著書の中ではそういうことをお書きになっているようですが、この日の講演ではちらりと臭わせながらもそこまではおっしゃいませんでした。

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面白かったのは、縁切状古文書の実物を次々と見せてくださったこと。最初はカラーコピーかと思いました。大抵は「三くだり半」なんですが、そうでないものも。また夫からのものでなくて、妻の実家から「そちらに嫁に出した娘が戻ってきてしまったから、あんたはもう他の嫁を貰っても構わない」というようなものも。また、夫は縁切状を出すと同時にその写しを持っていてたまたまそのワンセットが別の処から発見されたとか。何で写しがいるのかというと、縁切状を出したことが証明できないと、夫の方も再婚出来ないからなんだそうです。

ところで、通説での夫は「勝手」に離縁出来た、という解釈は縁切り状の定型文に「今般双方勝手合を以及離縁」とあるものを、「夫が勝手に」と読んでしまいがちなことからだと思いますが、これは夫の勝手(都合)によるもので妻のせいではないことを表明したもので、確かにその妻が再婚先やらその名主らに「既に離縁しているから問題無い」とこの書類を見せるときの為に、「妻が悪いのではない」と表明しておくのは思いやりに通じるものがあると言えます。それが定型文化しているところに「丸く収める」合意があるのであって、そう考えれば夫の強権ではありませんね。

あと面白いのは「離縁したんだから何処に行こうが、誰と再婚しようがかまわない」という表現の中に「隣の家であろうと」というのが定型なんだそうですが、中には「隣の家を除いて」というのがあるんだそうです。高木先生は「これはきっと隣の家の人間と浮気をしたんじゃないか」とおっしゃっていましたが、場を和ませようと面白おかしく話されたのか、本気でそう思われているのかまでは判りません。

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まあ、書いていくと切りがないのですが、最後に「爪印」について質問したらえらい喜ばれて、実物の古文書を見せて下さって「裏から見ると爪を押しつけた跡が解るでしょ」と。手にとって、メガネを掛けて見たけど・・・、解りませんでした。鑑定士には成れないね。(笑)

鑑定と言えば、よく「折り紙付きの」と言いますよね。そのれは江戸時代の公式のお達しの書式のひとつに、半紙を横に折って、折った常態の表から裏に「お達し」の文言を書くことがあるんだそうです。その形式が鑑定書も同様で、そこから「由緒正しい」ことを「折り紙付きの」というようになったとか。これはしらなんだ。

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ところでこの「縁切り文書の説明会」は4月12日にもあるようです。都合がつけばまた行ってみようかと。


そうそう、お約束の鐘楼の藁葺き屋根は今回は特別に書院の中からで御座います。

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もうひとつついでに。

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書院のお庭から見る表の梅も綺麗でした。

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こちらはいつもの仏殿の門から。あちらの梅は早かっただけあってもう散りかけていますね。

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宝蔵前のラッパ水仙。これは綺麗でした。

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そして枝垂れ梅もやっと満開に。

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奥に咲いているのは三つ叉です。和紙の原料のあれですね。もっとも観賞用に品種改良された方ですが。

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さて、お茶室。手前の青軸枝垂れもやっと満開になりました。

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書院の講演が終わってからですから1時半過ぎですね。逆光気味で白梅がとても綺麗でした。

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さっきの青軸枝垂れ梅を別の角度から。

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お茶席は先週で終わりの予定でしたが、満開なので1週間延長されたそうです。

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そして今日は乾菓子。最近はいつも生菓子があったのでそちらをお願いしていましたが、実はこの和三盆もなかなかのものなのです。

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ところでこの包み紙、これも紅梅を意識しているんでしょうか? そうかどうかは知りませんが、でもこの季節に似合ったよい景色です。


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