2018.05.25-26      三人の和紙展と紙布 

25日、北鎌倉の東慶寺ギャラリー(現ギャラリー空)に行きました。

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三人の和紙展 くらしに和紙を」の初日なんです。でも去年までは斐伊川和紙の紙漉職人・井谷伸次さんと江戸経師・鈴木光典さんの「二人の和紙展」だったんですけど。はて? 

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えっ、 「北鎌倉で最後の開催となる今年、新たに紙布作家の戸谷昌代さんをお迎えし、”三人の和紙展”として・・・」だって。去年は「戸田昌代さん」て書いてあったけど。

で戸谷昌代さんとの会話。
「娘は絶対に連れてこられませんね〜」
「なんでですか?」
「帯買ってなんて云われたら大変なことになるじゃないですか。 この帯に合う着物と云ったら上物の紬になるでしょ、私は倒産しちゃいますよ。」

・・・と云ったら、経師の鈴木さんが「おトウサンだから大丈夫♪」とずっこける駄洒落を。

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でも紙から糸って、言葉で言われてもピンとこないんで、今年はその実況中継を。

まず和紙を折ります。

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それをチョキチョキ切ります。

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広げるとこんな感じ。あっ、これは説明用ですから本当はもっと長いんですけど。

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それをちょっと湿らせて・・・

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ひとつ置きにプチプチとちぎると神社のお祭りの注連縄に付いている紙(何て云ったっけ?)の長いようなものが出来ます。

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それをもみくちゃにしたのがこれ。籠の中。

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それをこの足踏みの糸撚り機で撚っていきます。

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えっ、着物が替わったって? 実はこちらは初日の昨日の画像なんです。
昨日の画像だけじゃ判らないので今日また上記の分を撮らせてもらったという訳で。

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で、紙一枚分が途切れたら次ぎの紙をより合わせていきます。 その部分とチョキチョキ切ったときの折り返し部分はちょっと太くなりますが、それもまた味かと。

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そうして出来上がった糸がこれ。 白い方の糸は普通の糸と同じように藍染めにしたりします。

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女性ものの帯ひとつに井谷さんの漉いた和紙(約2尺×3尺)を70枚ぐらいって云ったかなぁ。それだけで材料費は卸し値としても十万弱? それにこの手間。更に藍染めして織って。その帯がウン十万。何十年も前に民芸館展で買った芹沢_介さんのお弟子さんの紅型の帯が十万円強でしたがその数倍。と云えば高い帯なんだけど、手間を考えると安すぎなんですよね。手工芸には常にこのジレンマが。特に手紡ぎの織物ね。

ところで、この実況中継は正確なのかって? 
さ〜、他の人に説明してるのを横で聞いてただけですから聞き違いもあるかも。(,_'☆\ ベキバキ
ただひとつだけ確かなことが。最初にチョキチョキと切る方向の縦横を逆にするととんでもないことに。和紙は漉く方向があるんです。例外は有りますが。鈴木光典さんから聞いた話では井谷さんとこの斐伊川和紙は繊維の方向が揃っているので紙が暴れないと。紙は暴れるんですよ。「4畳半襖の裏張」という小説があるけど、その「襖の裏張り」というのも紙が暴れを押さえる為です。井谷さんの漉いた和紙はその暴れが少ないと。繊維の方向が揃っているんだろうと聞いた気が。なのでその繊維の方向に合わせて切るから強い糸が出来るので、縦横を逆に切ったら真逆のボロボロの糸に・・・、とまでは聞いていないですが、多分そうなるかと。まあ想像ですが。


ところで、鈴木さん経由で井谷さんに発注した和紙が揃いました。発注したのはおと年。去年出来上がった紙を見て中間色を1種類追加したんです。特注と云っても単純なんですよ、薄い墨染めで宿紙よりも薄い墨染め。

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別の人の特注のまこも紙が彼の今年の新作なんですが・・・
「あれに比べたらとっても単純で楽だったでしょ♪」と井谷さんに云ったら
「何勝手なこと云ってんの(怒)、あんな明度差は写真家にしかわかんねよ!」
「えっ、判るでしょ。(^_^;)」
「漉いてる最中は全然わかんねよ! どんだけ苦労したか! 必死に見てたんだから! 目が悪くなったらあんたのせいだからな!」だって。フキフキ "A^^;

で、2日目の土曜日は閉店後にオープニングパーティ。
左から「二〜三人の和紙展」を十数年プロデュースしてきた稲生一平さん。斐伊川和紙の紙漉職人・井谷伸次さんと江戸経師二代目の鈴木光典さん。そして右端が昨年から加わった紙布作家の戸谷昌代さんです。

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今回はそのメンバーが持ち寄った品々。 左端は経師の鈴木さんの奥様が作られたもの。小ネギの刻みをこんなに沢山て、何で? と思ったら下に鶏肉の煮物が! 手前の漬け物は井谷さんのお母さんが漬けたものとか。奈良漬けの浅漬けみたいな味で、旨し♪ 

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このおにぎりは戸谷昌代さんのご主人が作っている完全無農薬のお米を稲生一平さんが炊いたとか。完全無農薬って本当に大変らしいです。でも明治ぐらいまではそうだったんですけどね。ということは江戸時代までの米はもっと痩せてた? あり得る。

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完全無農薬な時代の中でも平安時代と江戸時代では一町あたりの生産高は2倍以上違います。平安時代から鎌倉時代に農地の広さだけ史料にあって石高が判らないときには、私は一町あたり十石に換算しますが、江戸時代には二十石ぐらいのことが。土地によってだいぶ違うでしょうけど。でもねぇ、江戸時代の農家の肥料代は結構かかってるんですよ。干しイワシとかね。

宴もたけなわ。お酒は奥出雲の木次酒造さんの試飲分です。純米吟醸の無濾過生原酒。初日に社長兼杜氏の川本さんに「味見してみます?」といわれたんですが、そこで飲んじゃうとパーティの楽しみがひとつ減ってしまうのでぐっと我慢。その我慢分パーティでは何度もおかわりを。

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でも東慶寺での和紙展は今回が最後。何故かというとこの場所が無くなっちゃうからです。多分来年からは銀座のギャラリーになるんじゃないかと。

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