一次救命処置(BLS) 2012.7.25   【indexへ】

一次救命処置(Basic Life Support)とは、特殊な器具や医薬品を用いずに行う救命処置です。範囲は心臓マッサージと人工呼吸からなる心肺蘇生法(CPR)、とAEDの使用

救急車が到着するまでの時間は?

通報してから救急車が到着するまでの時間は年々遅くなり、2010年の東京では約10分。(更に119に電話するまでのロスタイムが・・・。)

  • 出血なら救急車の到着を待っても間に合います
  • 心臓が止まった場合はその10分で絶望的に。ロスタイムまで含めると。

何で10分で絶望的に?

脳細胞は酸素が行かないと短時間で死に始めます。
脳細胞が全部死ぬと死亡。部分的に死ぬと脳梗塞と同じように障害が。
だから一次救命処置は、脳への酸素供給を早期に再開・維持することが目的です。
出血、骨折の確認なんて後回し。

対処さえ早ければ助かる確率が高く、多くは現場で心拍を再開。そういう心臓マヒなどの心原性心肺停止は、病院外での心停止の6割も。(残りは病気や事故での心肺停止=死亡?)

人工呼吸はしなくて良いの?

両方した場合と、心臓マッサージだけした場合の大規模集計では、生存率と予後は、心臓マッサージだけの方が良かったと 。考えられる理由は2つ。

  1. 体中に酸素を届けたあとの静脈血でも酸素はゼロではない。なんとか脳細胞が死なない程度には酸素が残っている
  2. 人工呼吸をするためには、心臓マッサージを止めなければならない。このロスタイムによるデメリットが大きい

心臓マヒって、完全には止まっていないの?

心原性心肺停止の場合をより詳しく見ると、以下の段階なら助かる確率は高い。

  1. まだ死戦期呼吸がある
  2. 心室細動がある(無脈性心室頻拍もまとめます)

死戦期呼吸って?

1.の死戦期呼吸はあえぎ呼吸とも呼ばれ、一見息をしているように見えるけどなんか変で、短い吸気と長いポーズが特徴 。これを「呼吸有り」と思い心臓マッサージを行わないと、救命のチャンスを逃すことになります。最近119は「呼吸をしていますか」ではなく「呼吸は規則的ですか?」と聞くはずです。

この死戦期呼吸は心停止の40%にみられ、中央値で4分は続きます。10分続く場合も。これがあるうちは倒れてから間もない、心室細動があり、助かる可能性が高いということに。生存退院率も、これが無い場合の3倍とか。

無呼吸でも心臓マッサージの最中に死戦期呼吸に変わることがあります。ラッキーなのですが、これに安心して心臓マッサージを止めると、せっかくの救命のチャンスを逃します

 

AEDは何のため?

2.の心室細動は、心臓の筋肉が痙攣して正常な拍動が出来ない状態です。
代表は中年・老人などの心臓マヒ。しかし18歳以下の子供にも、テニスのボールが胸に当たるなどでも起こる心臓震盪(しんとう)という心室細動が。心臓は止まってはいないけど、血液のポンプになっていません。

止まってないけど機能停止。これがAED動作の条件です。電気ショックで痙攣から正常な拍動に戻します。正常な心拍がある場合、完全に停止している場合は通電しません。
だから「意識がなけりゃAEDやっちゃえ!」でも全然OK。
乳児に大人用のパッドでも、大人子供切替スイッチがなくてもOK。やってしまいましょう。

この心室細動は心臓マッサージによってしばらく維持されますが、それをしないと完全に止まってしまいます。だからなによりもまず心臓マッサージ。時間を稼いでる間にAEDを持ってきてもらいます。AEDが無ければ、救急車がAEDを運んでくるまでの10分間、現場に居合わせた人による心臓マッサージを続けることがとても大切なのです。
(でも一人だとメチャきつい! 上手でなくとも効果はある!)

ちゃんとやれば必ず助かるの?

絶対に助かるという訳では。市民による心臓マッサージで1か月後生存率は2倍になりますがそれでも14%。AED併用でも45%ぐらい。特に次の場合は楽観出来ません。

  1. 心原性心肺停止でも心停止から10分以上経過して発見された場合
  2. 窒息により心停止に至った場合(窒息から数えれば既に数分経過)

なので、助からなくても自分を責めないようにBLSをするしないもあなたの自由です。

一次救命処置(BLS)は、助かる可能性の高い心原性心肺停止にまず焦点を合わせてています。駆けつけた救急車の救急救命士や病院内でも一次救命処置(BLS)が。

それのみでは心拍が再開しない場合に、気管挿入や高濃度酸素など医療機器や薬剤も用いて行う救命処置を二次救命処置(Advanced Life Support)と云います。
しかし、病院への搬送開始前までに一度も脈拍の再開がなく、搬送中にもCPRを必要とする患者は、生存率も、社会復帰率も少ないとか。 

心臓マヒ以外は?

小児・乳児の場合は窒息による場合の方が多いです。何かが喉につまったなど。この場合は心臓マッサージより、背中を叩くなどして吐き出させる方が先です。やり方は、お母さんの方が詳しいでしょう。窒息では人工呼吸も重要です。わからなければ119に電話をすれば、救急車の手配と同時に電話口で対処方法を教えてくれます。

成人でも溺水の場合は手順が違いますが、それはレスキューの世界です。レスキュートレーニングを受けていない人、救急機材を持っていない人は、自分自身の安全を第一に考え、出来ることだけやりましょう。溺水も窒息なので人工呼吸も大切なのですが、溺者の2/3は吐きます(86%という報告も)。心臓マッサージしからやなくとも、誰もあなたを責めません

AED:救急隊到着前に使用 蘇生率7倍に 東京消防庁 消防庁 救急・救助の現況 2011.12